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【Solana】Protocol Report: コア技術と開発環境 – Proof of Historyと、パフォーマンスを支える8つの仕組み

公開日
2025-06-30
更新日
2025-06-30
株式会社Ginco

本レポートは、Solanaの全体像を解説した「Protocol Report」の【後編】です。前編では、Solanaの歴史的背景、市場での立ち位置、エコシステムを支える主要組織について解説しました。この【後編】では、パフォーマンスを支えるコア技術や開発者向けのツール群など、より技術的な側面を深掘りします。

なお、本レポートは特定のプロトコルを推奨するものではなく、Gincoが培ってきたリサーチや事業開発の知見に基づき、Solanaを技術的かつ中立的な視点から体系的に解説するものです。Web3領域における事業開発やリサーチに取り組む皆様にとって、客観的な情報源となることを目的としています。

【前編はこちら】
【Solana】Protocol Report: 全体像と主要な活用事例 – 歴史、エコシステムからDeFi、決済事例まで

1.Solanaの技術的な特徴

Solanaは、手数料コスト、処理速度、ノードの分散性といった特徴により、スケーラブルで効率的な分散型アプリケーション(dApps)を構築する開発者にとって、有力な選択肢の一つとなっています。

安価な取引手数料:ローカライズド・フィーマーケット

Solanaは、1回あたり0.001ドル未満という安価で予測可能な取引手数料を特徴としています。これは、ネットワークの混雑状況に応じて手数料が変動するBitcoinやEthereumとは異なる点です。Solanaは「ローカル・フィーマーケット(Localized Fee Markets)」という仕組みを導入し、手数料の安定化を図っています。

この仕組みでは、例えばNFTのミント(発行)時のように特定のアカウントに需要が集中した場合でも、その影響を該当アカウントの手数料上昇に限定し、ネットワーク全体の利用者に影響が及ぶことを防ぎます。この手数料モデルは、Solanaの並列処理能力によって支えられており、トランザクションを複数のスレッドで同時に実行することで、特定処理の混雑が他の無関係な取引に影響を与えることを回避します。

これは、ネットワーク全体の混雑により全ユーザーの手数料が上がってしまう「グローバル・フィーマーケット」とは対照的な設計です。

加えて、Solanaは「オプティミスティック・コンファメーション(optimistic confirmation)」により、400〜600ミリ秒という高速なトランザクションのファイナリティ(確定)を実現しています。これは、ネットワークの3分の2以上のステークを持つバリデーターがブロックを承認した時点で、全体の合意を待たずにトランザクションが確定する仕組みです。

これらの特徴により、Solanaは高速、低コスト、かつスケーラブルな基盤として、特に決済や高頻度取引を伴うユースケースに適した設計となっています。

SolanaとEthereumのフィーマーケット(手数料市場)を比較する図解。左側の「Solanaのローカライズド・フィーマーケット」では、トランザクションが複数の並列レーンで処理される様子が描かれている。これにより、一部のレーンが混雑しても、他のレーンは影響を受けず手数料が安定していることが示される。対照的に、右側の「Ethereumのガスベースネットワーク」では、すべてのトランザクションが単一のレーンで処理されるため、ネットワーク全体の混雑につながり、手数料が高騰する様子が示されている。
出典: VISA「A deep dive on Solana, a high performance blockchain network」

高速なトランザクション処理性能

Solanaは、最大65,000件/秒(TPS)という理論上のスループットと、最短で400ミリ秒のブロック生成時間を実現する設計となっています。 実際の運用においても、ブロックタイムはおおよそ500〜600ミリ秒で推移しており、Solanaは主要なブロックチェーンの中でも高い処理性能を持つと評価されています。

この即時性のあるトランザクションファイナリティは、特にリアルタイム性が求められるユースケース、たとえば決済、ゲーム、分散型金融(DeFi)などにおいて利点となります。

比較として、Ethereumは平均12 TPS、Bitcoinは約7 TPSとされていますが、この高い処理性能の背景には、Solanaの核となるProof of History(PoH)という独自のコンセンサスメカニズムが存在します。
※参照: 「Solanaの歴史: Proof of History(PoH)とは」

さらにSolanaでは、並列トランザクション処理が可能で、独立したトランザクションを別々のスレッド上で同時に実行することにより、他のブロックチェーンに見られるようなボトルネックを回避しています。
これらの仕組みに加え、最適化されたバリデータネットワークや低レイテンシなアーキテクチャによって、Solanaはネットワークの規模が拡大しても高スループットと低遅延を維持する設計となっています。

SolanaとEthereumのフィーマーケット(手数料市場)を比較する図解。左側の「Solanaのローカライズド・フィーマーケット」では、トランザクションが複数の並列レーンで処理される様子が描かれている。これにより、一部のレーンが混雑しても、他のレーンは影響を受けず手数料が安定していることが示される。対照的に、右側の「Ethereumのガスベースネットワーク」では、すべてのトランザクションが単一のレーンで処理されるため、ネットワーク全体の混雑につながり、手数料が高騰する様子が示されている。
出典: Obiex Blog「What Affects the Transaction Speed of Crypto Transfers?」

ノードの分散性

Solanaのネットワークは世界中に広く分散されており、46カ国、210の都市、506のデータセンターにわたって5,250以上のノードが稼働しています。

このような広範な分布により、ネットワークの分散性と耐障害性(レジリエンス)が高められ、特定地域での障害が全体のパフォーマンスに与える影響を低減します。
特に、アメリカとドイツには多くのバリデータが存在しており、これは他の主要なブロックチェーンでもよく見られる傾向です。

Solana Foundationは、さらなる分散化を推進するために、複数のバリデータクライアントの開発支援や、地理的に多様な地域でのバリデータ運用を促進しています。
2023年10月時点でのSolanaネットワークのナカモト係数(「あるブロックチェーンネットワークにおいて、システムの制御・合意に必要な最小の主体(ノード、バリデーター、マイナーなど)の数」)は21に達しており、これはネットワークの分散性やセキュリティを評価する上での指標の一つです。

このように、地理的およびクライアントの多様性に注力する戦略によって、Solanaはセキュリティ性と運用の堅牢性を向上させ、強固で効率的なブロックチェーンネットワークの構築を進めています。

Solanaのバリデーターノードの地理的分布を示す、Solana Compassのビジュアライゼーション。左側には、北米、ヨーロッパ、アジアなどにノードがクラスターとして存在する世界地図が表示されている。右側には、国別および都市別のノード数上位を示す2つの棒グラフが配置されている。このグラフは、本文で述べられている通り、米国が最も多くのノードを擁していることを視覚的に裏付けている。
出典: Solana Compass

2.Solana上での開発方法-Ethereumとの違い

多くのブロックチェーン開発者にとって、EthereumのアーキテクチャやEVM(Ethereum Virtual Machine)は馴染み深いものです。一方で、Solanaは根本的に異なる設計思想に基づいて構築されており、その開発モデルにも重要な相違点が複数存在します。

本セクションは参考情報として、特にEthereumでの開発経験を持つ方を対象に、Solana特有の概念や仕組みへの理解を深めることを目的としています。アカウントモデルや手数料体系、プログラミング言語といった基本的な違いから、トランザクションの構造や状態管理に至るまで、開発者が押さえておくべきポイントを項目別に解説します。

ⅰ. アカウントモデル

  • Solana:ステートレスなスマートコントラクトモデルを採用しており、「状態(state)」はアカウントに保持され、スマートコントラクト(プログラム)はそれらのアカウントを引数として受け取って操作を行います。この設計により、モダンなマルチコアプロセッサを活用した並列処理が可能となり、高スループットが実現されています。

  • Ethereum:スマートコントラクトのアカウント内に、ロジックと状態の両方を保持しており、状態と実行ロジックが密接に結びついています。
  • 開発者への影響: Solanaではロジックと状態が分離されているため、プログラムの再利用がしやすく、例えばトークンを新たにデプロイする必要なく、既存のToken Programで対応可能となり、デプロイコストの削減にもつながります。一方Ethereumでは、状態をコントラクト内で保持・管理するのが一般的ですが、Solanaでは状態は外部アカウントとして扱い、それをプログラムに渡す設計が求められます。

ⅱ. 手数料とローカル・フィーマーケット

  • Solana:ローカライズド・フィーマーケットを採用しており、手数料はアカウント単位で発生します。そのため、例えばNFTのミント時にUSDCを送るような無関係のトランザクションは、ネットワーク混雑の影響を受けません。
  • Ethereum:グローバル・フィーマーケットであり、人気のあるトランザクションがネットワーク全体の手数料を押し上げる傾向があります。
  • 開発者への影響: Solanaのローカライズドフィーモデルは、ユーザーにとって予測可能な手数料設計が可能です。さらに、状態の競合を避ける設計をすることで、手数料の最適化も可能です。

ⅲ. トランザクションの設計

  • Solana:1つのトランザクションに複数の命令(instructions)を含めることができ、複数の処理をアトミック(不可分)に実行することができます。
  • Ethereum:1つのトランザクションには基本的に1つの関数呼び出しが含まれます。
  • 開発者への影響: Solanaでは、複数ステップの処理を1トランザクションにまとめられるため、スマートコントラクト内で複雑な連携処理を書く必要が減り、ワークフローがシンプルになります。

ⅳ. プログラミング言語

  • Solana:主にRustを使用し、Anchorフレームワークによって開発の簡易化が図られています。Neonを使えばSolidityでSolana向けの開発も可能です。
  • Ethereum:主にSolidityを使用。
  • 開発者への影響: Anchorを使うことでより分かりやすい抽象化が可能です。

ⅴ. 開発ツールとエコシステム

  • Solana:SolanaFM(コードの表示)、Solana Playground(テスト環境)など、各種ツールが提供されています。
  • Ethereum:Hardhat、Ethers.js、Etherscanなど、豊富な開発ツールとリソースが整備されています。
  • 開発者への影響:Solanaで開発を行う際は、代替ツールの活用や新しいワークフローへの適応が求められます。

ⅵ. Mempool

  • Solana:メンプールは存在せず、トランザクションは直接次のブロック生成者に送られ、ネットワークの負荷を軽減しています。
  • Ethereum:ブロックに追加される前に、トランザクションはメンプールの中で順番を待つことになります。
  • 開発者への影響:Solanaではメンプールがないため、トランザクションの有効期限(150ブロック)などを考慮する必要があります。

ⅶ. 状態管理

  • Solana:PDA(Program Derived Addresses)を使って、Ethereumのmappingのようなキーとアカウントの関連付けを実現します。

  • Ethereum:コントラクト内にmapping(連想配列)を用意して状態を管理します。

  • 開発者への影響:Solanaでは状態の管理は外部アカウントで行うため、設計がやや複雑になりますが、その分柔軟性は高くなります。

ⅷ. アップグレード性

  • Solana:プログラムはデフォルトでアップグレード可能ですが、明示的に変更不可にもできます。

  • Ethereum:プロキシコントラクトを活用してアップグレード性を担保します。

  • 開発者への影響:Solanaではアップグレードが比較的簡単ですが、変更不可にするには明示的な設定が必要です。

ⅸ. 実行リソースの制限

  • Solana:1トランザクションあたりのコンピュート上限は1.4Mユニットで、さらに命令の深さやアカウント使用数にも制限があります。

  • Ethereum:1トランザクションあたりのガスリミットは30M。

  • 開発者への影響:Solanaではより厳しいリソース制限内での最適化が求められます。

ⅹ. 開発者向けまとめ

EthereumからSolanaへの移行では、ステートレスモデルへの適応、Rust(またはAnchor)の活用、並列処理を意識した最適化などが求められます。

Solanaは高スループット、予測可能な手数料、再利用可能なプログラムなど多くの利点を持ちますが、独自のアーキテクチャとエコシステムに対応する柔軟性も必要です。

3.Solanaを支えるテクノロジー

Solanaは、トランザクション処理の効率化、ネットワーク全体の最適化、レイテンシ(遅延)の低減を目的とした一連の技術によって、その高いパフォーマンスを実現しています。

また、これらの技術によって、開発者やユーザーに対する高速・低コスト・高スケーラビリティを兼ね備えたインフラ提供を実現し、分散型エコシステムの構築と利用を促進していると言えます。

ⅰ. Proof of History(PoH)

PoH(Proof of History)は、ブロックチェーンにおける時間管理のための技術であり、トランザクションやイベントに対して事前に暗号的なタイムスタンプを付与する「暗号時計」として機能します。

  • 基本概念:PoHは、検証可能な遅延関数(Verifiable Delay Function / VDF)を用いて、イベントが特定の順序と正確なタイミングで発生したことを証明する履歴を生成します。
  • 開発者にとっての利点:この仕組みにより、ノード間で常に通信しながら時間の合意を取る必要がなくなり、レイテンシ(遅延)を大幅に削減できます。その結果、取引の順序が予測可能となり、特に決済、ゲーム、DeFiなどの高スループットが求められるアプリケーションの開発がシンプルになります。
  • インパクト:PoHはSolanaのスケーラビリティを支える中核技術であり、セキュリティや分散性を損なうことなく、数1,000件/秒(TPS)のトランザクション処理を可能にしています。

ⅱ. Tower BFT

Tower BFTは、Solanaの高速アーキテクチャに最適化されたコンセンサス(合意形成)メカニズムです。

  • 基本概念:Tower BFTはPoH(Proof of History)を時間の基準として活用し、バリデーター(検証者)同士の通信回数を最小限に抑えながら合意に到達できる仕組みです。
  • 開発者にとっての利点:このメカニズムにより、トランザクションのファイナリティ(確定性)を迅速かつ確実に実現できるため、リアルタイム性が求められる取引プラットフォームや決済システムにとって重要な基盤となります。
  • セキュリティ面:Tower BFTは、一度下された決定をロールバック攻撃から守るためのロック機構を備えており、二重支払い(二重送金)などの不正行為にも強い耐性を持っています。これにより、Solanaは高いセキュリティを必要とする金融アプリケーションにとっても高いセキュリティを備えた環境を提供しています。

ⅲ. Turbine

Turbineは、Solanaにおける高性能なブロック伝播プロトコルです。

  • 基本概念:Turbineは、ブロックを小さなパケット(断片)に分割し、それらをツリー状の構造でバリデーターへと伝播します。
  • 開発者にとっての利点:この仕組みにより、ネットワーク帯域幅の使用量が削減され、地理的に分散されたノード間でも効率的なデータ配信が可能になります。これにより、ネットワークが混雑している場合でも、アプリケーションは低レイテンシを維持することができます。
  • スケーラビリティ(拡張性):Turbineは、データ伝送のボトルネックを回避することで、Solanaがネットワーク規模の拡大に応じて高スループットを維持できる仕組みを支えています。

ⅳ. Gulf Stream

Gulf Streamは、Solanaにおけるトランザクション転送を最適化するプロトコルです。

  • 基本概念:Gulf Streamは、未確定のトランザクションをネットワークの先端にいるバリデーターへ事前にプッシュすることで、ブロックが確定する前に処理の準備を行うことを可能にします。
  • 開発者にとっての利点:この仕組みにより、未処理トランザクションの混雑が大幅に軽減されます。これにより、リアルタイムでの確定性が重要なゲームや分析系アプリケーションにおいても、即時性の高い設計が可能になります。
  • 効率性の向上:Gulf Streamは、バリデーターの負荷を軽減し、リソースの効率的な割り当てを実現することで、Solanaが高いTPS(トランザクション処理能力)を維持するための重要な役割を果たしています。

ⅴ. Sealevel

Sealevelは、Solana独自の並列トランザクション処理エンジンです。

  • 基本概念:Sealevelは、トランザクション間の依存関係を識別することで、複数のスマートコントラクトを同時並行で実行できる仕組みを提供します。
  • 開発者にとっての利点:この並列処理により、開発者はボトルネックを気にすることなく、複雑でマルチスレッドなアプリケーションを構築することが可能になります。特に、分散型取引所(DEX)や大規模なブロックチェーンゲームといったユースケースで大きな効果を発揮します。
  • パフォーマンス面:Sealevelはマルチコアアーキテクチャを活用してハードウェアの性能を引き出し、他のブロックチェーンと比較して高いスループットを実現しています。

ⅵ. Pipelining

Pipeliningは、現代のCPU設計にも見られるトランザクション処理パイプラインであり、Solanaの高速処理を支える重要な仕組みのひとつです。

  • 基本概念:Pipeliningは、トランザクション処理を複数の段階に分け、それぞれを異なるハードウェアコンポーネントで同時に実行することで、高速かつ効率的な処理を実現します。
  • 開発者にとっての利点:この仕組みにより、トランザクションの検証と実行が迅速に行われるため、アルゴリズム取引やIoTシステムなど、高頻度なインタラクションを必要とするアプリケーションにとって適した基盤となります。
  • スケーラビリティ(拡張性):Pipeliningは、トランザクション量が増加しても一貫したパフォーマンスを維持するため、ユーザー体験の滑らかさ(スムーズさ)を確保する上でも重要な役割を果たします。

ⅶ. Cloudbreak

Cloudbreakは、Solanaが採用する水平方向にスケーラブルなアカウントデータベースです。

  • 基本概念:Cloudbreakは、同時に読み書き処理を行えるように設計されており、高スループットのオペレーションを実現します。
  • 開発者にとっての利点:この仕組みにより、アカウントデータへの高速かつ効率的なアクセスが可能となり、大量のユーザーを抱えるアプリケーションや、頻繁に状態が更新されるソーシャルネットワーク、DeFiプラットフォームなどにとって有利です。
  • スケーラビリティ:Cloudbreakを活用することで、データベースの制約によるパフォーマンス低下を抑制し、アプリケーションをスムーズなスケーリングを可能にします。

ⅷ. Archivers

Archiversは、Solanaにおける分散型のブロックチェーンデータ保存ソリューションです。

  • 基本概念:Archiversは、ブロックチェーンの履歴データの保存を、バリデーターから軽量なノードのネットワークに分散して委任することで、バリデーターの負担を軽減します。
  • 開発者にとっての利点:これにより、アプリケーションはネットワークに過剰な負荷をかけることなく、過去のブロックチェーンデータへアクセスすることが可能になり、分析、監査、コンプライアンス対応などの機能を実装しやすくなります。
  • 信頼性:保存されたデータは定期的な監査によって整合性が検証されるため、重要な情報の長期的な可用性を確保でき、開発者にとっても信頼性の高いデータ基盤となります。

4. ツールキットと標準規格(Toolkits & Standards)

Solanaエコシステムでは、開発を支援し、標準化を促進するための多様なツールキットや規格が提供されています。以下では、その主要なものを紹介します。

ⅰ. Solana Program Library

Solana Program Library(SPL)は、Solana上で共通的に利用される機能を提供するオンチェーンプログラムのコレクションです。

SPLには、トークン規格、ガバナンスメカニズム、ステーキングプロトコルなどが含まれており、開発者はこれらを活用することで、アプリケーションにFT(代替可能トークン)やNFT、分散型ガバナンス、DeFiプロトコルなどの機能を統合できます。

SPLを活用することで、開発時間を短縮できるだけでなく、Solanaエコシステム全体との互換性も確保することができます。また、このライブラリは常に更新されており、新たな標準や機能が継続的に追加されることで、進化し続けるブロックチェーンの動向にも対応しています。

ⅱ. Anchor Framework

Anchor Framework は、Solana の Sealevelランタイム 向けに設計された開発フレームワークで、オンチェーンプログラムの作成を効率化するための便利な開発ツール群を提供しています。

Anchorは、IDL(インターフェース定義言語)やマクロ、テストユーティリティなどの高レベルな抽象化ツールを提供することで、Solanaスマートコントラクトの開発をシンプルにします。これにより、冗長なコード(ボイラープレート)を大幅に削減し、開発者がプログラムの記述、デバッグ、デプロイを行いやすくなります。

さらに、AnchorにはクライアントSDKも含まれており、オンチェーンプログラムとのやりとりを簡潔にし、全体的な開発体験を向上させます。

ⅲ. Solana Stack Exchange

Solana Stack Exchange は、Solanaに関する開発者やユーザー向けのQ&Aプラットフォームで、コミュニティ主導で運営されているナレッジ共有の場です。

このプラットフォームでは、Solanaに関連する疑問を投稿したり、他のユーザーの質問に回答したりすることができ、課題解決や知識の共有、トラブルシューティングに役立ちます。

経験豊富なコミュニティメンバーによる投稿が多数あり、検索可能なトピックも蓄積されているため、Solanaでの開発や利用に関わるユーザーにとって、情報源の一つとなっています。

内容は、基本的な開発の質問から、高度なアーキテクチャ設計の議論に至るまで多岐にわたり、学び合いと問題解決を促進する協働的な環境が形成されています。

ⅳ. Core Documentatio

SolanaのCore Documentationは、Solana公式が提供する開発者向けの総合リソースであり、ガイド、チュートリアル、APIリファレンスなどを網羅しています。

このドキュメントには、初心者向けのステップバイステップ形式の解説、詳細なAPI仕様、実例付きのプロジェクトサンプルなどが含まれており、Solana上での開発を理解し、実践するための不可欠なツールとなっています。

また、最新の技術動向やベストプラクティスに合わせて定期的に更新されているため、開発者は常に正確かつ最新の情報にアクセスすることができます。

ⅴ. Solana Playground

Solana Playground は、ブラウザ上でSolanaのスマートコントラクトを記述・デプロイ・テストできるWebベースの統合開発環境(IDE)です。

セットアップ不要で、事前に構築されたテンプレートやシミュレーション環境が用意されているため、プロトタイピングやSolana開発の学習に適しています。

このプラットフォームは複数のプログラミング言語に対応しており、以下のような開発支援機能を備えています。

  • コードのシンタックスハイライト(構文強調表示)
  • デバッグツール
  • バージョン管理との連携機能

これらにより、Solanaでのスマートコントラクト開発を効率的かつスムーズに行える環境が整っています。

ⅵ. Token Extension

Token Extension は、Solanaにおける SPLトークンの管理機能を拡張するツール群であり、メタデータ標準、ミント(発行)、バーン(焼却)、送金などの操作をサポートします。

この拡張機能により、Solana上でのトークンのカスタマイズや管理機能が拡張され、多様なトークン機能を必要とするプロジェクトで広く活用されています。

Token Extension は以下のような機能も備えており、多様なトークンタイプに対応しています:

  • トークンの凍結(フリーズ)
  • 委任(デリゲーション)
  • マルチシグ(複数署名)による承認機能

これらの機能により、開発者は堅牢で柔軟なトークン管理ツールキットを活用して、さまざまなユースケースに対応したトークンシステムを構築できます。

ⅶ. xNFT(エグゼキュータブルNFT)

xNFT は、Solana上で登場した新しい標準で、実行可能なNFT(Executable NFTとして、分散型アプリケーション(dApps)をNFTとしてパッケージ化・配布できる仕組みです。

このxNFTは、Backpackウォレットに対応しており、ユーザーはNFT上で直接アプリケーションと対話することが可能です。これにより、ゲーム、ユーティリティ系NFT、インタラクティブなdAppなどに適したフォーマットとなっています。

xNFTの導入により、開発者は以下のような可能性を広げることができます:

  • 動的かつ対話的なNFTの作成
  • 複雑な機能やUIを内包するNFTアプリケーションの提供
  • NFTを通じたアプリ配信とエコシステムの拡張

この新しい標準は、NFTの用途を「単なるデジタル所有物」から「実行可能なインターフェース」へと進化させ、Solanaエコシステムにおける革新的なアプリ体験を可能にしています。

ⅷ. Solana Pay

Solana Pay は、高速・低コスト・安全なピアツーピア決済を実現する分散型の決済プロトコルです。

即時決済をサポートし、ウォレットやPOS(販売時点情報管理)システムとの連携も可能。さらに、QRコードを使ったシンプルな支払い手段も提供しており、EC(電子商取引)や小売のユースケースに適しています。

このプロトコルは、以下のような特長を持っています:

  • 高トランザクション処理能力と低レイテンシに対応
  • 即時かつ安全な決済体験を、販売者と消費者の両方に提供
  • オンチェーン決済により、仲介者不要で透明性の高い取引が可能

Solana Payは、Web3ネイティブな決済体験を現実世界に持ち込む手段として、活用が期待されています。

ⅸ. Solana Mobile Stack

Solana Mobile Stack(SMS) は、モバイル端末上でのSolana体験を最適化するために設計されたツール群です。

このスタックには以下のような主要コンポーネントが含まれています:

  • Seed Vault:秘密鍵の安全な管理を実現するセキュアなストレージ機能
  • Mobile Wallet Adapter:モバイル上のウォレットとdAppを接続するための標準化インターフェース
  • Saga Phone:Solanaネイティブに設計されたスマートフォンで、モバイルでのWeb3利用を容易にする専用端末

SMSの目的は、安全かつシームレスなモバイル体験を提供することであり、開発者がSolanaの技術的特徴を活かしたモバイルファーストの分散型アプリケーションを構築できる環境を整えています。

5. 統合型アーキテクチャとしてのSolana

本レポートは前編・後編の2部構成で、ブロックチェーンプロトコルであるSolanaを体系的に解説するものです。

前編では、Solanaの歴史的背景、市場での立ち位置、エコシステムを形成する主要な組織と具体的なユースケースを概観しました。続く本記事(後編)では、技術的な核心へと焦点を移し、その際立ったパフォーマンスを支えるProof of Historyをはじめとする8つのコア技術、さらに開発者向けのツールや標準規格の解説を通じて、エコシステムの構造をより深く掘り下げています。

これら前編・後編を通じて見えてくるのは、Solanaの**「統合型(モノリシック)」というアーキテクチャ**です。これは単一のレイヤーで処理を完結させる設計思想であり、代表的な競合であるEthereumなどが採用する多層的な「モジュラー型」とは対照的なアプローチと言えるでしょう。

このアーキテクチャの選択にこそ、各プロトコルの思想と性能を決定づける根幹が表れているように思います。両者のアプローチの違いと、そこから生じるトレードオフは、今後もブロックチェーンにおける主要な技術的論点の一つであり続けるのではないでしょうか。

【前編はこちら】
【Solana】Protocol Report: 全体像と主要な活用事例 – 歴史、エコシステムからDeFi、決済事例まで

※参考文献・Web

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